「蒸発する」——日本語には、人がまるで水蒸気のように突然姿を消すことを表す独特の言い回しがあります。本作は、日本社会における「失踪」という現象に正面から向き合ったドキュメンタリーです。
ある日突然、家族や職場から姿を消してしまう人々。日本では年間数万件にのぼるとも言われるこの現象は、社会のひずみの象徴とも言えます。監督の小谷英治は、当事者やその家族への取材を重ね、なぜ人は消えることを選ぶのかという問いに静かに向き合いました。
2002年のクランクインから約3年の歳月をかけて完成。安易な結論を避け、消えた人々の声を可能な限り忠実に記録しようとする姿勢が本作の核心です。
小谷英治は、ワイズ出版の映画部門において中心的な役割を果たしてきた映画人です。フランス映画論の著者としても知られ、映画批評と映画制作の両面で活動しています。本作『蒸発』は、社会問題への鋭い視線が評価されました。